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注文の多い料理店パロディ小説

注文の多い料理店

 

昨日実に奇妙な夢を見た。猫に食べられるという夢だ。「生臭い魚と並べられるのはごめんである。」といい断ったものの、間一髪であった。そこでなんとなく、明日の狩りには三つの武器を持っていくことにした。狩りは全く順調には進まなかった。少しでも気分を晴らそうと、猫好きである友人と損害マウントを取り合ったりした。話は昨日の夢のことになり、「猫は可愛げもあるものから、おかしなものまでいるのだよ。」といいかけたその時、山猫軒というレストランを見かけた。猫好きの血が騒いだ友人に連れられ、中に入ったのだが、なんとも奇奇妙妙とした場所である。それも案内係のふてぶてしく、いかにも怪しい雰囲気の猫が待っていたのである。どこかでみたことがある気がする。私は背中がゾクゾクとしていた一方で、友人は猫にメロメロである、なんと能天気なのか。我々は引き返す間もなく、案内猫に中に入れられてしまった。「あなた方はがたいも良く、お若いようで大歓迎でございます。」猫は言った。「お上手な猫さんだねぇ。」と友人は大変満足げである。「なんの、服屋もしかり、お世辞をいう人ほど信用してはいけないのである。」と思ったのもつかの間、流れで自然と中に進んでしまった。「当軒は、注文の多い料理店ですから、どうかそこはご承知おきください。」猫は言った。「これはきっと、注文があまり多くて支度が手間取るけれどもごめんくださいということだろう。」友人はそういった。「いや、そんなはずはなかろう、普通混み合っておりますとでも言うであろうが。猫の言うことならなんでも信用してしまうのだろうか、恐るべし猫好き。」と思ったが、猫好きには通じまい。「お客様がた、ここで髪をきちんとして、それから履物の泥を落としてください。」猫は言った。「これは各自が家でしてくることだろう、世話焼きの母じゃあるまい。」と思ったが、この案内は案外まともではあったので、従うことにした。ここで、恐怖と違和感を持ちつつ、なぜ中に進み続けるのかと疑問に思われたかもしれない。お忘れであろうか、私には昨日用意した三つの武器があり、万が一でも猫などには食べられない自信があったのである。「鉄砲と弾丸は私にお預けください。」猫は言った。かくして、一つ目の武器はあっさり奪われてしまった。「どうか帽子と外套と靴を取り、ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、尖ったものはみなここに置いてください。」猫は言った。友人は誠実も誠実に従っているのだが、ついに私は反論の言葉が出た。「財布と金物を置くとは、あなた方は山賊なのか?それともMRIなのか?いかなる理由なのか。」猫は困った表情で、「安全を期すためにこそ、我々が財布と金物をお預かりするのです、勘定に関しては、どうぞご心配なく。」と言った。少しはできる猫である。「ただ靴は習慣上履きたいのである、私はアメリカ人であるから。」と嘘を付き、靴を履くことだけは許された。かくして、二つ目の武器は守られた。「壺を二つ用意してあります、そのクリームを顔や手足、耳や全身にすっかり塗って下さい。ご失礼のないよう、私はいったん退出します。」猫は言った。美容によさそうであるな、と今度は少し的外れなことを言っている友人を横目に、これはチャンスだと捉えた私は、まずそのクリームを舐めてみた。これは牛乳ではないか、しかもこのうまさは北海道の一等牛から取られたものに違いない。ちょうど腹が減っていたので、私はこのクリームを全て食べ、事なきを得た。猫が帰ってきた。「注文はもうすぐできます、十五分とお待ちは致しません、すぐ食べられます。早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」北海道のクリームを一気食いした後なので、香水の匂いがいつも以上に嫌に感じられた。そこでつい、香水を案内猫の顔に振りかけたのである。「ニャにをするのニャ!」そう言って、香水を振り払っているすきに、私は友人の手を取り、手前の大きな扉の中に入った。「いやわざわざご苦労です、大変結構にできました、さぁ私のおなかにお入り下さい。」恐ろしい声で、私より一回り大きいほどの猫がそういった。周りにはもう少し小さい猫が十匹ほどいた。「私が猫好きでなければ…。」そう震える友人に、「ヒントの飽和状態であったろうが!しかし、やはりこういうことであったのだな!」私は叫んだ。「もう遅いですよ、お客様、さぁ早くいらっしゃい、フライにでもしてあげましょうか!」「そうはいくか!」私は靴の中からチュールを取り出し、「さぁお前らはこの状況で私らを食べるのか、チュールを食べるのかどっちだ!」そう言った途端、「チュールゥ~」と甘い声で大きな猫がそれにしゃぶりついた。「偉大なりチュール!」そう思いながら、友人と共に全力で走りだした。チュールに夢中の猫もいたが、中には冷静に追いかけてくる猫も何匹かおり、そこで髪の毛の中に隠しておいた三つ目の武器、煮干しをまきびしのごとくまき散らした!すると、それに転ぶ猫多数!かぶりついてしまうものも多数で、かくして追い猫は全滅したのであった。走った末にはまた大きな扉があり、そこを押すと、外に出ることができた。息絶え絶えの中、「今のは夢か何かであったのだろうか。」友人は言った。「まだ猫好きをやめないつもりなのか。」と言おうとしたが、代わりに私はこういった、「そうだな、しかし、ネコニモマケズとはこういうことだな。」と。